クリーナー

「iNSTICK ZUBAQ」開発クリーナー 設計担当 U.R.さん(左)
モーター 設計担当 H.M.さん(右)

クリーナー

ブラシの性能とサイズを変えずに
「毛絡み除去機能」の搭載に成功

クリーナー 設計担当 U.R.さん工学部機械科卒 2009年入社

使いやすさへのこだわりが生み出した独自のワンモーション設計

「iNSTICK ZUBAQ」の第2弾モデルHC-JD1Jから開発に関わっています。「ZUBAQ」は、部屋にそのまま出して置け、片手でさっと使えることをコンセプトに作られた掃除機。手前に引き出せばスティッククリーナー、上に持ち上げるとハンディクリーナーとなる独自のワンモーション設計が特長で、その緻密な構造設計はもちろん、どこからでも自然に持ち上げられるようハンドルの形状にもこだわりました。
また、分解して丸ごと水洗いできるサイクロンボックスは、なるべく部品を一体化してパーツの数を減らしたうえ、簡単に着脱できる構造とし、お手入れのしやすさと使いやすさを両立しています。

デザインと性能の両立性を保ちつつ
新たな付加価値機能を搭載

「ZUBAQ」の開発で主に私が担当したのは、「毛絡み除去機能」の搭載です。これは、ブラシをヘッドから引き抜くだけで絡まった毛を取り去る、三菱掃除機のオンリーワン技術。もともと当社のヨコ型クリーナーに搭載していたものを、お客さまのご要望にお応えして「ZUBAQ」にも採用することになったのです。毛絡み除去を実現するためには、ヘッドの中にカッターを仕込んだり、それが手に触れることのないよう邪魔板を設置したりと、ある程度のスペースが必要となります。ところが、充電台と一体のデザインであるZUBAQの場合は、ヘッドの形状やサイズを変更することができません。

すると必然的に、毛絡み除去の機構を付加した分、ブラシの面積が狭くなってしまうのです。また、ブラシを横から引き抜く構造とすることで周囲に隙間が生じ、吸引性能が低下するという課題もあります。
そこで今回の搭載に際しては、毛絡み除去機能の構造やブラシの回転軸などの部品を見直すことでヘッドのコンパクト化と吸引ロスのカバーを実現。前モデルと同等のブラシ性能、吸引力を引き出すことに成功しました。いくつもの制約に試行錯誤したミッションでしたが、その分大きな達成感と自信を得られる経験となりました。

学生のみなさんに伝えたい、この仕事の魅力とやりがい

クリーナーをはじめとした家電のデザインや機能は、デザイン研究所や住環境研究開発センターなどと共同で開発しています。こうしたグループ内の知見や技術シナジーを通じて新しい価値創造をできるのも、総合電機メーカーならではの強みです。当社の仕事は、アイディアを実際の製品設計に落とし込むことで、設計者には量産化の技術も求められます。それだけに苦労も多いですが、やりがいも大きい。何より自分たちが作ったものが店頭に並び、お客さまに使ってもらえるというのは、この仕事の大きな喜びですね。

業界トップクラスの高効率・ハイパワー
「JCモーター」の開発成功に至るまで

モーター 設計担当 H.M.さん理工学部知能機械専攻 2008年入社

小型で高効率・高速回転を実現する次世代家電用新モーター開発への挑戦

「iNSTICK ZUBAQ」のパワフルな吸引力を支えているのが、当社で新開発した高性能ブラシレスDCブロアーモーター「JCモーター」です。これは、小型・軽量でありながら、最大毎分12万5000回転のハイパワーを誇る高効率モーター。以前の当社製掃除機用モーターと比べると、体積を約36%削減したうえで高率は約30%も向上させています。私は入社以来ずっとモーターの開発に関わってきましたが、JCモーターはこれまで一切やったことのない新しいステップへの挑戦。それだけに困難も達成感も大きいものでした。

小型かつ高速回転で生じる課題をどうクリアするか

最も苦労したのは、小型化しながらいかに高速回転を実現するかという点。モーターパワーは回転力と回転数によって決まりますが、回転力はモーターの大きさに比例する。つまり小型モーターでパワーを上げるには回転数を高める必要があるんですね。でも回転数が上がるほど制御が難しくなるし、遠心力が増大することでローター(回転子)が壊れるリスクも高まります。
そこで、遠心力の影響を軽減するために磁石とシャフトを一体成形し、さらにその周りを軽量で高強度な炭素繊維材料で覆うことで、ローターの強度を向上させました。一体成形とすることで回転時の過重の偏りを抑える効果も得られ、結果的に最大毎分12万5000回転という業界トップクラスの高速回転を達成することができたのです。 またステーター(固定子)には、鉄心を巻きやすい形に分割してから巻く当社独自の分割鉄心技術をさらに進化させた、「Y型分割鉄心構造」を新たに採用。コイルを巻くルートやスピードを細かく調整することでコンパクトかつ高密度に巻き、銅損や鉄損を抑えることに成功しました。

学生のみなさんに伝えたい、この仕事の魅力とやりがい

モーターはお客さまの目には直接見えませんが、クルマでいうエンジンのように家電の要となる部分。自社製品のコア技術に関わっているという自負もありますし、さまざまな可能性を見出せる仕事だと思っています。またモーター開発においては、どうやって作るか、どうしたら作りやすいかという量産化の設計も重要で、ここはものづくりの腕の見せどころ。「モーターの三菱電機」の看板を支える開発者のひとりとして、大きなやりがいを感じています。